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  • イベント2022/6/9

    イスカ公式 【シーン別】おすすめの寝袋(シュラフ) ~季節と標高から考える寝袋の選び方~

イスカ公式 【シーン別】おすすめの寝袋(シュラフ) ~季節と標高から考える寝袋の選び方~

 

はじめに

 

キャンプや宿泊を伴う本格的な山登りを始めるにあたり、初めて寝袋を購入するとなると、誰もが困ってしまうのが寝袋の選び方。自分がこれから泊まる場所はどれくらいの気温で、どれくらいの暖かさの寝袋が必要なのか。専門店に出向けば経験豊かな店員さんに教えてもらえるとは思いますが、自分で調べるとなるとそれほど簡単なことではありません。

 

また、検索をすれば『お勧めの寝袋10選』というようなタイトルの記事はいくらでも見つかりますが、どのような環境で使うのにお勧めなのかが不明瞭な場合が多く、夏用の寝袋と冬用の寝袋をひとくくりにして議論をしている記事が多いことには閉口してしまいます。

まず大前提として、お勧めの寝袋はどのような環境・使用シーンでご使用されるかによって変えるべきだということで、今回、季節と標高で15シーンに分けておすすめの寝袋をご紹介していきたいと思います。

 

当社ではクイックチョイス(QC)という寝袋選びの際にご利用いただける一覧表をご用意しております。こちらの表は日本国内の1000m前後~2000m前後の山岳地域で、どの季節にどの寝袋を選べばいいかを目安にした表になっております。

 

 本文をお読みいただくにあたっては、2022年版弊社カタログP.1のQUICK CHOICEか、HP上のウェブカタログの同ページ(下記URL)をお手元にご用意いただくと大変スムーズかと思います。

 

イスカカタログ_2022-2023 (actibookone.com)

 

 

目次

 

はじめに

①3月 自宅で使用する・寒い地域・標高伯耆大山(1729m)

②4月上旬 お花見シーズン

③4月上旬 御嶽山(3067m)

④ゴールデンウィーク 大峰山(1915m)

⑤ゴールデンウィーク 槍ヶ岳(3180m)

⑥梅雨 アルプスでのテント泊(3000m前後)

⑦7月 穂高連峰(3190m)

⑧7月~9月初旬 夏のキャンプ 

⑨9月 立山 雷鳥平(2300m)

⑩10月 紅葉の涸沢カール(2300m)

⑪11月下旬 雪の立山(3003m)

⑫11月下旬~12月上旬 紅葉キャンプ

⑬12月末の中級山岳(1500m~2000m前後)

⑭1月 雪中キャンプ(1000m以下)

⑮2月 八ヶ岳(2899m)

さいごに

 

まずは春先から、順番にGW・梅雨・夏・秋・冬の順番でシーンごとに気温とお勧めの寝袋をご紹介していきます。初めから最後まで通しで読んでいくとなかなかのボリュームになりますので、ご自身が実際に寝袋をご使用される時期やシーンだけをピックアップしてご参考にしていただければと思います。

 

① 3月 自宅で使用する場合・寒い地域・伯耆大山(1729m)

 

ひな祭りの気候、と聞くとどんなイメージを持たれるでしょうか?暖かい?寒い?平均的な3月上旬の東京や大阪の気温を見ると、日中の気温が15℃まで上がる春らしい陽気の日もある一方で、最低気温が2℃前後と、かなり肌寒く感じる日もあるようです。

 

寝袋を選ぶ際に調べて欲しいポイントは、宿泊する場所のその日の最低気温です。

イスカでは寝袋の温度表記に『最低使用温度』を採用しています。現地の最低気温が『最低使用温度』よりも低い場合には、その寝袋を持っていくことはお勧めできません。この前提をご理解いただくとシンプルで分かりやすい温度表記かと思います。

 

平地での最低気温が5℃~10℃の3月上旬、私が仮に自宅に友人を招いて、布団ではなく寝袋で寝てもらうとなれば、友人に使用してもらう寝袋はQC2クラスを選びます。具体的に例を挙げると、化繊シュラフのパトロール600【最低使用温度2℃】がこういった状況にはぴったりの寝袋になるでしょう。

 

ただ、標高が少し高い場所や、緯度が高い地域(北海道や東北地方)では3月ではまだまだ最低気温が0℃以下になることもあります。このような環境ではもう一つ保温性のランクを上げ、QC3の温度帯のものを選択される方がいいかと思います。

 

さらに標高が高い山岳地域で使用する寝袋についてはどうでしょうか?

雪にまみれて登る大山北壁(3月3日)

 

上の写真は、3月3日ひなまつりの日の伯耆大山の写真です。大山の標高は1729m。それほど高くない山と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、標高が100m上がると気温は0.65℃下がると言われていますので、ざっくり計算すると平地の気温より11℃低いということになります。つまり、大山山頂の3月の気温は一日の大半は氷点下。暖かい日でも山頂の気温は5℃前後といったところでしょうか。もちろん雪はたっぷり残っていて、この時期は軽装で気軽に登ることができる山ではありません。

このような環境に対応する寝袋はQC4。避難小屋泊を想定するとお勧めの寝袋は軽くてコンパクトなダウンシュラフ、エアドライト670【最低使用温度-15℃】になります。

 

② 4月上旬 お花見シーズン

 

吉野山の桜(4月上旬)

 

3月も中盤を過ぎると暖かい日が続くこともあり、今年のお花見のタイミングは・・と開花情報をチェックしたり、週末の天気を気にして過ごす方も多いかと思います。

中にはお花見キャンプを予定している方もいらっしゃるかもしれませんね。4月初旬から中旬の東京の最低気温は8℃前後。このぐらいの気温であれば、QC2の出番も出てきますが、けれどもまだ季節は完全に移り変わってはいません。寒の戻りがあれば最低気温は平地でも2℃を下回る日もあります。寒がりの方や、標高1000m程度での宿泊では引き続き、QC3最低使用温度は-6℃前後の寝袋を選ばれるほうが無難になります。 キャンプでは化繊シュラフのアルファライト700X【最低使用温度-6℃】が使い勝手が良くてお勧めです。

 

③ 4月上旬 御嶽山(3067m)

 

御嶽山飛騨頂上(4月上旬)

 

4月上旬。お花見シーズン真っ只中のこの時期、2000mを超える山岳地帯ではまだまだ雪山シーズンが続きます。「花冷え」という言葉をご存じでしょうか?お花見をするころの寒の戻りの事を指す言葉で、桜が大好きな日本人らしい、とても風流な言葉ですね。ですが、この時期に標高の高い場所で強烈な寒波に遭遇した場合、風流だと感じる余裕はないでしょう。天候の安定したタイミングで山に入ったとしても、3000m級の山では12本爪アイゼン・ピッケル・ワカンなどの冬山装備は必需品になります。もちろん、寝袋も冬用のものを。最低でもQC4、最低使用温度-15℃程度が必要になります。

上の写真を撮影したときには登山口の駐車場(標高1800m)で前夜泊をしましたが、最低気温は-5℃。ニルギリEX【最低使用温度-15℃】でしっかりと睡眠を取ってから登ることができました。

 

④ ゴールデンウィーク 大峰山(1915m)

 

ゴールデンウィークの山上ヶ岳付近(4月下旬)

 

最近は温暖化の影響もあってか、ゴールデンウィークになると最高気温が25℃を超える日もでてきます。それでも2000m近くの山岳地帯へ行くと、平地でのぽかぽか陽気に慣れた体と頭ではびっくりするような寒さに遭遇する日もあるのが現実です。

 

上の写真は4月末に社員みんなで登った大峰山の写真です。登山口ではまさか稜線で吹雪にあうなどとは全く想像できない、濡れても寒くもならない程度の小雨でした。ところが標高が上がると雨が雪に変わり、積雪が出てきて、稜線に出ると吹雪。気温は氷点下で、濡れた岩場や梯子は凍り、グローブを持参していない私は凍った岩を握りしめて必死で登り、手がかじかみ大変辛い思いをしました。

 

また、別の年に大峰駈道を2泊3日で踏破した社員は『軽量化のためにエアプラス450【最低使用温度-6℃】ではなくあえてエアプラス280【最低使用温度2℃】を持って行ったが、すごく寒い思いをした』と帰社後に話していいました。

 

軽量化をするためにあえて薄手の寝袋を持っていくことももちろん間違いではないのですが、ゴールデンウィークに2000m前後の山で宿泊する場合には、やはりQC3クラスが安心です。

 

⑤ゴールデンウィーク 槍ヶ岳(3180m)

 

槍ヶ岳山荘から見た槍ヶ岳(5月上旬)

 

ゴールデンウィークの後半は5月上旬になりますが、3000m級のアルプスなどの様子はどうなっているでしょうか?雪解けの進み具合はその年によってかなりばらつきがありますが、5月6月は基本的には残雪期といわれる時期で、雪山を初めて経験する方も比較的入山しやすい時期になります。

 槍ヶ岳山荘の気象観測データを参考にGW後半の気温をまとめると、日中は暖かい日であっても10℃まで上がることはなく、最低気温は毎日0℃以下、寒い日には-15℃になる日もあるようです。

ここではQC3(最低使用温度-6℃クラス)かQC4(最低使用温度-15℃クラス)のどちらを持って行くべきか迷うかもしれません。私たち社員が自分で行くときには下記を判断材料としています。

・天気予報などで調べた、当日の予想最低気温

・自分が寒がりか暑がりか

・荷物が軽いことを優先するのか快適な睡眠を優先するのか

・テントの大きさやテント内の人数(1人で空間の大きなテントで眠るよりも、複数人で狭いテントで眠るほうがずいぶん暖かくなります。)

・シュラフカバーの有無/テントの性能/マットレスの性能/防寒ウェアやグッズの有無

 

上記を考慮しても判断がつかない場合や、初心者の方にはQC-4をお勧めします。

暖かい寝袋が必要だけれど1gでも軽い寝袋を、という方にはエアプラス630【最低使用温度-15℃】がおすすめです。

 

⑥梅雨 アルプスでのテント泊(3000m前後)

 

 

早ければ5月末、例年では6月初旬あたりから梅雨の時期が始まります。7月中旬までのこの梅雨の時期、雨の合間を縫って日帰り登山を楽しむことはできるかもしれませんが、テント泊を何週間も前から計画する方は少ないかもしれません。

平地ではじめっとした蒸し暑い日が続くことがありますが、6月になっても3000m級の山では残雪があるような気候であることをお忘れなく。6月でも北アルプスの3000m前後の平均最低気温は0℃~5℃前後になります。また、濡れた体で寝袋にもぐりこんだ場合には、寝袋が濡れてしまって本来の保温性能が発揮できないことも想定されます。寝袋本体や体を濡らさない工夫はもちろん、シュラフカバーなどで外からの濡れにも対応する必要があります。この時期になると雪の上にテントを張る、というシーンもほとんどないかと思われますので、QC3(最低使用温度-6℃クラス)の寝袋が活躍するでしょう。山岳エリアでのテント泊には濡れに対して強いエアドライト480【最低使用温度-6℃】がおすすめです。

 

⑦7月 穂高連峰(3190m) 

 

憧れのジャンダルム(7月)

 

梅雨が明ければいよいよ夏本番!この時期に向けて体力や技術を磨いてきたし、いよいよアルプスにテント泊で挑戦!という方もいらっしゃるでしょう。夏のアルプスにはどれくらいの保温性の寝袋を持って行けばいいのでしょうか。

 

北アルプスの山小屋のデータなどを確認すると、標高3000m付近の7月・8月の最低気温は10℃前後。小屋の利用者などの様子を見ていると、昼間は半袖で行動が可能でも、夕方には吐く息が白くなりダウンジャケットを着ている、という環境になります。

 

このような寒暖差が激しく、防寒着が必要な夏の山岳地域に適した寝袋はQC2(最低使用温度2℃クラス)になります。軽さとコンパクトさ、あたたかさの3点をバランス良く兼ね備えた定番シュラフ、エアドライト290【最低使用温度2℃】がおすすめです。

 

ところで、最低気温が10℃だったらQC1(最低使用温度6℃~10℃)でも十分使えるので、こちらのほうが軽くていいのでは?と考える方や、実際に夏のアルプスではもっと薄手の寝袋をご愛用している、という方もいらっしゃるかとは思います。

 

私たちは、寝袋選びで一番重要なことは、「寒い思いをしない、また、万が一寒い思いをしたときに、自分でどうにか対処できるか」であると考えています。

経験と技術(寝袋で眠る技術、とでもいいましょうか)がある方はご自身の判断でどんどん軽い寝袋を持参していただければと思います。ただやはり初めて寝袋をご購入される方には、たとえ重量が増えたとしても暖かめの寝袋をお勧めしております。

 

⑧7月~9月初旬 夏のキャンプ

 

平地でのキャンプ(7月下旬)

 

夏の平地~標高500m前後でのキャンプの場合を考えてみます。

連日ニュースなどでも報道されるように、この時期には日中の最高気温は35℃~40℃を超える危険な暑さの日が続きます。またこちらは最高気温に比べると話題に挙がることは少ないかも知れませんが、東京の7月8月の最低気温は25℃前後。この数字だけを見ているとそれほど高くないようですが、湿度が高いと蒸し暑く感じる気温でもあります。

蒸し暑い日本の夏のキャンプでは、正直に申し上げると寝袋は必要ありません。寝袋を使用される場合でも、お腹にブランケットのようにかけて使用する程度となるでしょう。

 

写真はイスカの社員のキャンプ風景ですが、使用したのは『シーツSZ』(左)と『インサートシーツ』(右)になります。どちらも掛け布団のような使い方をしました。

 

ただし、標高が1000mを超えるような高原などでのキャンプの場合、最低気温は20℃を下回る場合もあります。思いがけない寒さで風邪を引かないように、夏用のシュラフQC1程度は持参しましょう。お勧めはコストパフォーマンスに優れたコンパクトなシュラフ、ウルトラライト【最低使用温度10℃】です。

 

⑨9月 立山 雷鳥平(2300m)

 

テントでにぎわう雷鳥平(9月)

 

9月は平地ではまだまだ日中の気温が25℃以上の夏日や30℃以上の真夏日が続くので、夏の延長、残暑のイメージがあるかと思います。残暑が厳しい時期だからこそ、さわやかな風が吹き、過ごしやすい気候の標高が高い山がお勧めです。

 

上高地とならぶ北アルプスの玄関口、室堂(2450m)。ここから徒歩でも1時間弱の好条件の場所にある雷鳥平野営場は北アルプステント泊デビューにはもってこいの場所になります。室堂ターミナルが公表している気温表によると、9月中旬の朝9時の平均気温は10℃。朝日が昇るころの気温はもう少し低く、5℃~8℃程度でしょうか。

 

これぐらいの気候であればお勧めはQC2(最低使用温度2℃クラス)。ご自身でザックに詰めて持ち運ぶことになるかと思いますので、このクラスで最軽量のダウンシュラフ、エアプラス280【最低使用温度2℃】がおすすめです。

 

9月も下旬になると最低気温が0℃前後の日も出てきますので、使用する寝袋もQC3(最低使用温度-6℃クラス)の暖かさのものへと、ボリュームアップが必要になってきます。

 

⑩10月 紅葉の涸沢カール(2300m)

 

涸沢の紅葉(10月上旬)

 

10月に入ると暑さもようやく落ち着き、運動の秋、ちょっと山登りでも始めてみようかな、とアクティブな気分になる季節。平地では11月末から12月が紅葉の見ごろですが、山では一足先に紅葉シーズンがやってきます。

 

10月初旬、涸沢では紅葉を求めて毎年沢山の登山客が訪れ、大混雑となります。これだけ多くの人が入山しているので気軽に登ることができると思われがちではありますが、防寒対策が必要な時期と場所である、という事はしっかりと認識する必要があります。年によっては紅葉が終わらないうちに降雪や積雪が起こることもあります。そして涸沢カールのテント場からさらに登り、穂高連峰の稜線に上がるとなると、気温はさらに5℃は下がる、という事も覚えておいたほうがいいでしょう。

このような環境ではQC3(最低使用温度-6℃クラス)の寝袋が必要になります。コストパフォーマンスに優れ、かつしっかりと暖かいダウンシュラフ、ポカラX【最低使用温度-6℃】がお勧めです。

 

さらに季節が進み10月末から11月になると3000m級の山々は徐々に雪化粧をはじめ、翌年の5月中旬ごろまでの半年以上の間は基本的には雪に覆われたままの状態が続きます。

 

⑪11月下旬 雪の立山(3003m)

 

立山 みくりが池 (11月下旬)

 

11月も下旬になると、立山の稜線はすっかりと雪に覆われ、凍った池にも雪が降り積もるような環境になります。初冠雪から立山黒部アルペンルートが閉鎖される11月末までのこの時期には毎年、多くの登山者やスキーヤー、ボーダーが訪れます。冬用のアイゼンやピッケル、わかんやスノーシューが必要な本格的な雪山ですので、寝袋ももちろん冬用が必要です。クイックチャートではQC4(最低使用温度-15℃クラス)がベストなチョイスになります。連泊を計画している方に特にお勧するのは800FPのグースダウンをたっぷり封入したハイパフォーマンスモデル、エアプラス630【最低使用温度-15℃】です。

 

⑫11月下旬~12月上旬 紅葉キャンプ

 

 

山が雪に覆われてしまう11月下旬ですが、本州の平地では北から徐々に紅葉が進む時期となります。関西では年にもよりますが12月中旬ごろまで紅葉を楽しめるポイントがあります。紅葉を楽しみながらキャンプをする場合、どれくらいの保温性が必要になるでしょうか。関西のこの時期の最低気温は平地で5℃~10℃、標高500m前後の最低気温では、寒い日では0℃前後になる日もあるような環境になります。暖かく眠るためにはQC3(最低使用温度-6℃クラス)が安心。キャンプでのお勧めはコストパフォーマンスの高い化繊シュラフ、アルファライト700X【最低使用温度-6℃】です。

 

⑬12月末の中級山岳(1500m~2000m前後)

 

年末の美ケ原(2034m)

 

この時期に標高が1500m以上の山でテント泊をするにはしっかりとした技術・経験・装備・覚悟が必要になります。また次の雪中キャンプの項目でもご紹介しますが、里山や標高が1000m前後の場所での雪中キャンプであっても-15℃になることは普通に考えられますので、寝袋の選択を間違えると命の危険を感じることがあるかもしれません。

 

12月末の1500mを超える山岳地域でのテント泊にはQC5(最低使用温度-25℃クラス)の寝袋が必要です。エアドライト860【最低使用温度-25℃】がこのクラスのダウンシュラフでは定番でお勧めです。

 

なお、どれほど保温性の高い寝袋であっても、断熱性の高いマットレスを併用することは必須条件になります。また、ダウンジャケットやほかの防寒装備、テントシューズやネックウォーマー、ニット帽などの併用もかなり効果的でおすすめです。

 

⑭1月 雪中キャンプ

 

 

日本海側を除く西日本や都市部の平地では、年内で一番寒い1月末~2月であっても長期の積雪になることはほとんどありません。雪中キャンプといえば積雪がないと始まらないので、都会に暮らすキャンパーにとってはある程度標高の高い場所か緯度が高い場所へ移動する必要があります。今回は長野県松本市(600m前後)の気温を参考に、標高1000m未満のアルプス山麓での雪中キャンプを想定してみます。

 

松本市の1月の最低気温の平均は-5℃。日中の最高気温は5℃前後になります。標高が100m上がれば気温は0.65℃下がりますので、単純計算すると1000m地点の最低気温は-11.5℃となります。ただし、これはあくまで平均です。場合によっては-15℃を下回る日も想定されます。このような厳しい寒さではQC5(最低使用温度-25℃クラス)が必要になります。

 

基本的には、山登りでは化繊のシュラフは大きすぎるのでコンパクトなダウンシュラフを選ばれる方が多いでしょう。ですが、車を横付けできるキャンプや、持ち運ぶ必要性がない車中泊では、化繊のシュラフも候補にあがります。

 

-15℃前後まで冷え込む可能性のある雪中キャンプや車中泊にはQC5(最低使用温度-25℃クラス)が必要です。冬用の化繊シュラフ、アルファライト1300EX【最低使用温度-20℃】が雪中キャンプでは定番のシュラフでお勧めです。

 

ちなみに、1月の松本市の最低気温記録は-24.8℃。どんな寒波が来ても十分耐えられるように余裕をもって選ばれるのであれば、ダウン量がたっぷり1100gのデナリ1100【最低使用温度-30℃】をチョイスされるのもいいでしょう。

 

⑮2月 八ヶ岳(2899m)

 

厳冬の八ヶ岳(2月)

 

2月初旬は1年でも最も厳しい寒さがやってくる時期。あえてそんな時期に、さらに厳しい環境の雪山に挑むことが楽しくてたまらない物好きな人たちがいます。(書いている私もその一人ですが)

2月の八ヶ岳、赤岳鉱泉(2215m)の最低気温は-15℃前後。ここから八ヶ岳の主峰である赤岳山頂までは主稜線の北西側にあたり、陽が差すのが遅いため晴れた日でも気温が上がりにくく、また風が通る地形でもあるため体感温度が-30℃を超えることも普通にあり得る環境となります。

 

2月の八ヶ岳にはもちろん、一番暖かいQC5(最低使用温度-25℃クラス)がお勧めです。軽さと暖かさのバランスから見るとエアプラス810【最低使用温度-25℃】がベストチョイスではありますが、赤岳鉱泉までは登山口からそれほど急斜面を必死に登る場面はないので、重量が増すことを許容できるのであれば同じ保温性があるデナリ900【最低使用温度-25℃】でも十分活躍するかと思います。

 

さいごに

 

春から順を追って標高別におおよその気温とお勧めの寝袋をご紹介致しました。

この記事では北海道・東北などの北国や、また四国・九州エリアなどの温暖なエリアについてはほとんど触れておりません。また、季節の移り変わりは微妙なもので、ぽかぽか陽気の一週間後の寒の戻りもあれば、季節が思ったよりも早く進んだために秋口に寒い思いをすることもあります。本文でも随所で触れておりますが、寝袋の選択は非常に難しく、「何月何日に標高〇mならこの寝袋で100%快適に眠ることができます!」とお伝えすることはできません。「もう少し暖かい寝袋を持ってくるべきだった」「こんなに大きくて重い寝袋はいらなかった」ということはどれだけ経験を積んでも起こりうることだと思います。また、就寝時に快適かどうかはご自身の体質はもちろん、経験・技術・体力・心理的状況、風や湿度、その日の運動量や食事の内容その他もろもろの事情によって影響を受けます。この記事の内容はあくまで目安としていただき、ご自身でベストな寝袋を決める参考としてご活用していただければ大変嬉しく思います。

 

長文になりましたが最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。