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  • イベント2022/5/9

    ダウンシュラフの選び方【構造と仕様・縫製】

 

シュラフの選び方【構造と仕様・縫製】

 

前回のブログ「ダウンシュラフの選び方【生地・ダウン】」ではシュラフの性能・機能を決定するのは、1 構造と仕様、2 縫製、3 生地素材、4 ダウンであり、各モデルの違いは、生地とダウンのみとご説明しました。今回のブログは各モデルで共通の1 構造・仕様、2 縫製について詳しく書いていきたいと思います。

 

※構造と仕様

■最適な表面積

■3D構造

■ダウンの配分とボックス

■こだわりの仕様

※縫製

■厳しい縫製基準

■まとめ

 

■最適な表面積と3D構造

 

〇最適な表面積

熱は必ず温度の高い方から低い方へ移動します。これを熱移動の原理といいます。例えば冷たい金属の棒を手で握った時に、手が冷たく感じるのは手の熱が金属の方に移動しているからです。また冷たい棒を握ることによって手と金属が接触して熱移動が起こります。この接触による熱移動を伝導といい、触れている面積に比例して熱移動の量は大きくなります。

 

 

シュラフを使う環境でもこの熱移動が起こっています。温度の高い体の熱はシュラフ越しに触れている温度の低い外気の方へ移動します。また移動する熱の量は外気と接触するシュラフの大きさに比例します。当社では熱移動の原理を踏まえて、低温下でも体から熱が極力奪われないようにシュラフのサイズを大きすぎない「適切な表面積」で設計しています。

 

 

 

〇3D構造

人の体の断面は背中側が小さく胸側が大きい丸みを帯びた形をしています。昔のマミー型シュラフは胸面と背中面のサイズが同じで、体の断面に沿っておらず、内部にできた無駄な空間の空気の対流は保温性の低下につながるという課題がありました。当社で採用している3D構造は体の断面に沿って胸側にゆとりを持たせており、狭すぎず広すぎない自然な内部空間を実現、体にあったウエアのように圧迫感がなく快適な寝心地です。

 

 

またシュラフ全体でダウンのかさ高を均一にするために、シュラフの内生地を小さく、外生地を大きくカットし縫い合わせた「ディファレンシャルカット」で仕上げ、保温性を高めています。

 

 

 

■ダウンの配分とボックス

 

〇ダウンの配分について

限られた量のダウンでシュラフの保温性を最大限引き出すために、体重でダウンがつぶれてしまう背中側にはマットレスをご使用いただく前提もありダウンを4割、胸側には6割の配分で封入しています。

 

 

また寒さに弱い足元、胸元、頭部には多めのダウンを封入し効果的に保温性を高めています。

 

 

〇ボックス構造について

シュラフは封入したダウンが膨らむことで断熱性を発揮します。膨らんだダウンは動かない空気(デッドエア)を取り込むことにより、断熱材となります。ダウンの作り出す空気層はその厚みに比例して断熱性を高めます。ダウンを固定の位置にとどめ、求める箇所で適正な厚みを作り出すのがボックス構造です。シュラフの表生地と裏生地の間をメッシュ生地で区切って空間を作ったもので、ダウンの移動も防ぎます。

 

 

当社ではボックスの厚みを各温度シリーズで調整しています。冬期用は厚く、夏用は薄くというように、それぞれの温度シリーズで最適な厚みを設定し、保温性を調整しています。加えて全てのシュラフは背中側と胸側でボックスの厚みを変え、保温性の向上と軽量化を両立させています。

 

 

〇ボックス構造について

現在ダウンシュラフには保温性に応じて台形ボックス、ボックス、シングルの3つの構造を採用しています。冬期用には台形ボックス構造、主にスリーシーズン用でボックス構造、夏用にはシングル構造を採用、ダウンの量や求める機能に応じて、最適な構造を決定しています。保温性の高い順に台形ボックス構造、ボックス構造、シングル構造となります。シングル構造以外は内部にメッシュ素材の隔壁を設け、ダウンの移動を防いでいます。シュラフ表面には内部メッシュと生地を縫い合わせた縫い目があります。縫い目は物理的な穴であり、内部であたたまった熱が出やすい箇所でコールドスポットと呼ばれます。シュラフの内側と外側で縫い目をずらして距離をとり、熱損失を削減した台形ボックス構造は現在最も優れた構造です。

 

 

冬期用のモデルでボックスの間隔が均等でないのはこのためです。ボックス構造はダウンのかさ高性を引き出す標準的なものです。シングル構造はシュラフの表生地、裏生地を縫い合わせた構造で、縫い目にはダウンの厚みが無く保温性がありませんが、サマーモデル用として耐久性と軽量化をはかれ、コンパクトな収納が可能となります。

 

 

■こだわりの仕様

 

〇セパレートボックス

ダウンの偏りを防ぎ保温性を高めるために、シュラフの首から腰の両サイドに縦型のボックスを装備しています。胸元のボックスは足元に比べ横に大きく、寝返りや重力によりボックス内部でダウンがサイドに移動することがありました。シュラフの両サイドに縦型のセパレートボックスを設計することで、首から腰にかけてのダウンの移動を抑え、より効率的に保温します。

 

 

〇ショルダーウォマーとドラフトチューブ

シュラフの中で動くと内部であたたまった空気が首元から出て、逆に冷たい外気が入ってくるご経験があるかと思います。この現象を効果的に防ぐために首元にはショルダーウォマーを設置しています。寒い時にはダウンの詰まったチューブが左肩のコードを引くことでマフラーのように巻き付き、内部であたたまった空気をとどめ、冷気の侵入を抑えます。

 

 

ジッパー部分もダウンが無いのでコールドスポットとなります。内部からの熱の損失と外部からの冷気の侵入が課題となります。シュラフ胸面のジッパー内側にはダウンの詰まったドラフトチューブを配置、ジッパーを閉めた時にドラフトチューブがジッパー部分をカバーします。

 

 

〇立体フードとフードチューブ

低温時には頭部からの放熱への対策が重要です。頭からの放熱を抑えることで全身の熱効率をアップすることができます。立体フードは圧迫感を抑えて頭を包み保温性とフィット感に優れています。またフードのドローコードを絞った際にシュラフの呼吸口がしっかりと鼻口の部分に位置するように設計しています。冬期用に採用しているフードチューブにはダウンが詰まっていて、顔あたりがやわらかく、冷気の侵入と暖気の流出を抑えます。

 

 

〇フットボックス

人が寝る際の足の形はつま先を少し開いた状態となります。この形にそってシュラフのフットボックスは人間工学に基づいた逆台形に設計しています。さらに高い保温性を求めらる冬期用では逆台形の上底を先端方向に傾けています。こだわりのフットボックスは寒さを感じやすい足元に自然な形で沿い、動かしやすく保温性にも優れています。また多めのダウンを封入することで快適睡眠に配慮しています。

 

 

〇ジョイントテープ

ダウン量280g以上のモデルには足元内側にジョイントテープを装備しています。シュラフを重ねて使用する場合に、インナーシュラフを足元でしっかり固定できます。夏用のエアドライト290とスリーシーズン用のエアドライト480の2本をお持ちの方が、シュラフを重ねることでダウン量770g、重さは冬期用を使用するよりも増しますが、冬山への応用も可能です。(2022SSより ダウン280g以上のモデルに搭載)

 

 

〇ジャムストッパー

暗闇でジッパースライダーを開閉したときに生地を噛みこみジッパーを閉められず難儀をすることがあります。また万が一の緊急の脱出が必要になった場合に生地の噛みこみは大問題です。ジッパーの両サイドのジャムストッパーは内部に太めの糸が縫い込まれています。芯の役割で生地がジッパーに干渉するのを防ぎ、噛みこみはほとんどありません。シュラフの内部外部ともに装備しています。また糸を使用することで軽量化も実現しています。

 

 

 

■厳しい縫製基準

 

最高品質の素材を使用し、最高の保温性をつくりだす設計でも、優れた縫製技術で仕上げられなければそのシュラフの性能を最大限発揮することはできないと当社では考えています。厳しい山岳条件下の使用でシュラフに求められるものはシンプルに安心してあたたかく眠れること、そして故障がなく安心して使えることだと思います。その重要な基本条件を満たすために、当社ではコストをおしまず3cm間に18針の厳しいガイドラインを設定し、シュラフの安定性・耐久性を高めています。さらに太めの丈夫な糸を細い針で縫製することで、縫い目からのダウンの吹き出しを抑え、強度をアップさせています。ダウンシュラフの全ラインナップで共通の縫製基準となります。他の追従を許さない最高の縫製。ぜひ店頭でご注目いただきたいポイントです。

 

 

 

■まとめ

 

当社ダウンシュラフの構造と仕様・縫製へのこだわりは、保温性、耐久性、軽量性の基本性能を高めています。どれも実際のフィールドでこそ活かされます。安心してお使いいただける当社シュラフをぜひご体験くださいませ。長文最後までお付き合いいただきありがとうございました。