イベント2021/12/28
リペアシートの使い方
寝袋を引っ掛けて破いてしまった!穴をあけてしまった!
楽しい山登りやキャンプに水を差すトラブルは一気に気分が滅入ってしまいますよね。
今回は、アウトドア用品の簡単な修理ならご自身でできてしまう便利アイテム【リペアシート】の強度を十二分に引き出す使い方をご紹介します。
リペアシートの種類
リペアシートには熱で接着するタイプと熱を使わないシールタイプのものがあります。熱で接着するリペアシートは裏の接着材(糊)を熱で溶かして生地に浸透させて接着します。
接着には温度・時間・圧力が関係します、熱は150°前後、時間は15~30秒必要となるものが多く生地へのダメージに注意が必要です。撥水加工された生地は、接着材が浸透しづらいため、ある程度の圧着技術が必要となります。
熱圧着タイプ表側 左:ポリエステル/右:綿
熱圧着タイプ裏側 透明部が接着材(糊)です
シールタイプは強力な粘着材が塗布されており熱を必要としません、はさみなどでカットして生地に貼り付ければよく、とても簡単です。寝袋の補修にはこのシールタイプをおすすめします。
シールタイプ表側 左:タフタ/右:リップストップ
シールタイプ裏側 裏紙をめくると粘着面です
寝袋に使われている生地は?
アウトドアグッズに用いられている生地は撥水加工やシリコンなどの樹脂を加えて防水性や撥水性を高めたものを使用しているケースが多いかと思います。イスカの寝袋も強力な撥水力をもつナイロン(66・6)生地やポリエステル生地を使用しています。
ナイロンとポリエステルの一般的な特徴として、ナイロンは摩耗に強く軽量ですが、熱には弱いという特徴を持っています。(耐熱温度80°~120°)ポリエステルは速乾性があり変形しにくく耐熱性に優れていますが、汚れを吸着しやすく、毛羽立ちができやすいという特徴を持っています。(耐熱温度120~160°)
熱接着しないシールタイプをおすすめする理由として、ナイロンは熱に弱い素材であり熱接着タイプとは相性がよくないということと、化学繊維の中ではポリエステルは熱に強い素材ですが、天然素材に比べれば弱いので、熱接着タイプの加熱温度と加圧時間によっては繊維が溶けてしまうリスクがあるためです。
基本の使い方(シールタイプ)
使用方法はメーカーによって若干の違いはあるかもしれませんが、基本は補修部分の汚れを綺麗に落とし、補修箇所より少し大きめに(四方1cmぐらい余裕があれば安心です)角は丸くカットして、しっかり力を加えながらこすりつけてシートと生地を密着させます。
めくれの対策に角を丸くカットします。
リップストップは生地目に合わせて貼ります。
強度を十二分に引き出す使い方
これで完成なのですが、さらに密着度を高めるためにアイロンで少しだけ熱を加えて下さい。前述のナイロンとポリエステルの特徴についての説明とは矛盾しますが、これは粘着材をあたため柔らかくして生地表面との密着度を上げることが目的ですので、本当に少しだけ熱を加えるだけに留めます。密着度合に大きな差が生まれますので、これから説明する3つの 注意事項を必ず守って挑戦してみて下さい。
1・アイロンの温度設定は低にする
一般的なアイロンの温度設定は「低」は80度~120度、「中」は140度~160度、「高」は180度~210度となっています。スチームは高温になる可能性があるので使用はしません。ナイロンの耐熱温度は80°~120°ですので低に設定します。ポリエステルはナイロンより耐熱性は優れており120°~160°ですが、ここでは粘着材を温めて柔らかくする温度があれば十分ですので、低に設定してください。
アイロンの中設定以上では、繊維の表面が柔らかくなり、熱あたりやテカリの発生リスクがあります。熱圧着タイプのシートとは違い、本来は熱が不要なシールタイプは基布自体がナイロンのものが多く熱に弱いのは同じです、中温や高温でアイロンを使うと層間剝離(基布と粘着材が分離する)を引き起こす可能性があります、シートを考慮しても低が絶対条件となります。
2・あて布を必ず使用する
アイロンの熱を分散させ、熱あたりやテカリや繊維の傷みを防止するために使用します。あて布にはハンカチやバンダナが使用できます、バンダナは大きいのでアイロンが商品に直接あたるのを防ぐことができるのでおすすめです。下敷きにはアイロンの圧力が均等にかかるように、タオルやクッションなどを敷いて下さい。
3・加熱時間は短時間で数回に分ける
低温であっても熱があたっている時間が長いと、繊維の表面が柔らかくなり熱あたりやテカリの発生リスクが上がります。シートの粘着材は3~5秒前後で十分あたたまり柔らかくなりますので、力を加えずに数回に分けてアイロンをあてて下さい。
下敷きにタオルを使用します、補修箇所に合わせてタオルの大きさを調整します
アイロンが直接あたらないように、大きめのあて布を使用してください
必ず低温設定で数回に分けて熱を加えてください、3~5秒を繰り返してください
基本通りにリペアシートを使用した場合と熱を加えた場合の密着度合の比較
基本の使い方での密着度合
基本通りでも十分な密着度合です。粘着材が生地表面にしっかり密着しています。比較のために無理やり剥そうとしますが、力を入れないと剥がれません。密着しているため、寝袋本体の生地がシート側に引っ張られているのが分かります。
熱を加えた場合の密着度合
粘着材が温められて柔らかくなり、生地にしっかりと密着している(シートと生地の境界に見える白い糊です)のが分かります。かなり力を入れてもなかなか剥がれません。リペアシートが伸びて変形しているのが分かります。基本の使い方よりも、寝袋本体の生地がシート側に引っ張られているのが顕著で、補修箇所の密着強度が上がっています。
最後に
いかがでしょうか、熱を加えた方がしっかり密着しているのが確認できるかと思います。シールタイプのリペアシートは扱いやすく、基本の使い方で十分に補修できるおすすめのアイテムです。さらに強度を上げたい方は、注意事項=アイロンの低設定・あて布・加熱時間を必ず守って挑戦してみてください。より一層アイテムへの愛着が深まることは間違いなしです。
※くれぐれも、生地を溶かさないように注意しておこなって下さい!